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『母の目から自分を見る』感謝の気持ちが原動力に

「シフト・アシスト通信」小早祥一郎さん

「内観」という自己修練法があります。浄土真宗の僧侶でもあった故吉本伊信氏が開発したもので、外界と遮断された静かな部屋で精神を集中し、自分と他者との関わりを調べ、面接者に報告するものです。特に両親に対する調べが重要で、内観が深まれば、時に劇的な精神的変化を引起こすと言われています。

今回私は、伊豆高原にある「心身養生苑」において二泊三日で「感性内観」を体験してきました。感性内観は鬼木豊氏によって考案され、感性を開放させることでより深く内観に集中できるようにしたところが特徴です。

まず母に対して、@自分が生まれたときから小学校入学まで、A小学生・中学生時代、B高校生・大学生時代、C社会に出てから今まで、の四つの時期に区切り、「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」を調べます。

このとき、「母の目を通して自分を見る」ようにします。私たちは普段、自分のことを自分で見ることは出来ません。しかし内観では、対象者の視点になり切って、「客観的に」自分を見ます。

正直なところ、初めはなかなか深いところに入り込めませんでした。なによりも、幼い頃の出来事はあまり思い出すことが出来ません。ポツポツと断片的なエピソードは思い出すのですが、どうもそれらが深く心に響いて来ないのです。段々と焦ってきました。「こんなことで、内観の効果があるのだろうか?」と。

そのとき、ちょうど折り良く面接者である鬼木豊氏が、「考えるのではなく、感じるのです。」「思い出すのではなく、母の目から自分を見るのです。」「一つ一つの出来事には必ず意味があるのです。その意味を感じ取ってください。」とアドバイスしてくれました。

そのアドバイス通りに、考えることを止め、感じることに集中しました。母が私を見て、どのような気持ちだったか、を感じ取ることに努めました。

すると突然、母の気持ちが分かりました。私は随分生意気でわがままな青年で、特に十代後半から三十代前半までは、ことあるごとに両親と衝突して、時にはひどい言葉を投げつけたこともあります。そんな時、母は私を見て「なんてかわいそうなんだろう」「なぜこの子はこんなに苦しんでいるのか」「自分が代われるものなら代わって苦しみから解放してやりたい」と思っていることが分かったのです。

そして母は、私が生まれてから今までずっと私に、「あなたが正しい。私はあなたを無条件で信じている。だからあなたは自分が正しいと思う道を進みなさい。」と心の中で言っていたのです。

それが分かったとき、私の目からは涙があふれ出て、嗚咽が止まりませんでした。ありがたい、という感謝の気持ち。申し訳ない、という懺悔の気持ち。愛しい、という思慕の気持ち。それらがあふれ出て、止まらないのです。これだけ感性が揺さぶられたのは、初めてでした。

私は今回の体験を通して、母の心に触れ、「自分が正しいと思う道を進む」ための大きなエネルギーを得ました。心の底から「ありがたい」と思ったとき、人は行動する原動力を得るようです。